日本の競争力の本質を問い直す一日
日本の競争力の次なる章を形づくるものは何か。
この問いのもと、IMDは日本経済新聞社との共催により、2026年5月28日、東京にて初のプログラム「IMD Boot Camp @NIKKEI」を開催しました。
本プログラムは、IMD 世界競争力センター所長のアルトゥーロ・ブリス(Arturo Bris)教授、およびIMD 日本代表の宮林隆吉リードのもと、約40名の次世代リーダーを迎えて実施されました。テーマは「持続的な価値創造を実現するリーダーの戦略立案・意思決定」。国・企業・経営リーダーが直面する競争力の課題について、IMDのデータと実務経験に基づく洞察を軸に、対話を通じて深く掘り下げる一日となりました。
「変わること」ではなく「引き出すこと」
IMD 世界競争力センターの知見をもとに、ブリス教授は次のように指摘しました。
「日本は別の経済に生まれ変わる必要はない。すでに持っている資産の中にあるダイナミズムを解き放つことが重要である」
このメッセージは、参加者にとって大きな示唆となりました。競争力とは新しいものを創り出すことだけではなく、既存の強みや資産をいかに活かしきるかにあるという視点です。
鍵となるのは「アジリティ」
1日を通じて繰り返し浮かび上がったキーワードは「アジリティ(俊敏性)」でした。
宮林は、日本の課題は能力不足ではなく、その能力を競争力へと転換する力にあると強調しました。すなわち、すでに存在する高い技術力・人的資本・組織の蓄積を、より迅速に成果へと結びつけるための
- 意思決定のスピード
- グローバル視点でのリーダーシップ
- 組織の継続的な刷新
が、今後の競争力の鍵となるという指摘です。
参加者の声:マクロ視点と自己認識の重要性
参加者からは、多くの示唆に富むフィードバックが寄せられました。
- 「普段、自分たちの競争環境についてマクロな視点で考える機会がなかったので、大変刺激になった」
- 「自分たちを客観視することで、本来の強みの上に競争力を築くことの重要性に気づいた」
- 「世界の中の日本という視点を持ちながら、健全な危機意識を持つ必要性を感じた」
これらの声は、日本企業における「内向き志向」からの転換と、グローバルな文脈での自己認識の重要性を改めて示しています。
パネルディスカッション:日本ラグビーに学ぶ変革

プログラムのハイライトの一つは、パネルディスカッションでした。
ブリス教授に加え、日経新聞の奥村茂三郎氏、元ロート製薬CHROの高倉千春氏、そしてラグビー元日本代表キャプテンの菊谷崇氏を迎え、多角的な視点から活発な議論が展開されました。
中でも印象的だったのは、ここ10年で国際舞台において大きな飛躍を遂げた日本ラグビーの変革についての議論です。菊谷氏は、その成功の背景について次のように語りました。
「日本の強みを活かすことが成功につながった」
これは単なるスポーツの成功事例に留まらず、ビジネスにも通じる本質的な示唆を含んでいます。すなわち、競争力とは「自らを作り替えること」ではなく、「自らの強みを再定義し、最大限に引き出すこと」によって生まれるということです。
競争力再構築に向けて
本プログラムを通じて一貫して示されたメッセージは明確です。
競争力は外部から与えられるものではなく、自らの内側に存在する可能性を認識し、それを言語化し、実行に移すことによって築かれるものです。
日本が再びグローバル競争の中で存在感を高めていくためには、まず自らの強みを正しく理解すること。その出発点に立ち返る機会となりました。
