
IMDは2025年の「世界競争力ランキング(WCR)」を発表、日本は2024年より3ポイント順位を上げて、35位に回復しました。
世界競争力ランキングは、「企業が持続的な価値創造を行う環境」を各国・地域がどの程度提供できているかを測定する指標として、世界で高い評価を得ているものです。今年は世界69カ国・地域を評価対象としました。
社会的・政治的な分断が世界的に進む中でも、経済の繁栄を保つには、優れたガバナンスと制度の強さが不可欠であることがわかりました。
主な結果:
- スイスが1位に返り咲き、シンガポール(1位から2位へ)、香港特別行政区(2ランクアップ)が続きます。
- カナダ、ドイツ、ルクセンブルクがトップ20内で最も大きな改善を見せた一方、オーストラリアとアイルランドは大きく順位を落としました。
- 社会的・経済的・政治的分断の少ない国々(例:スイス、デンマーク、スウェーデン)は、競争力スコアが高い傾向にあります。
「世界競争力ランキング(WCR)」は、69カ国・地域を対象に、以下4つの要素で評価をしています:
- 経済パフォーマンス
- 政府の効率性
- ビジネスの効率性
- インフラ
従来の競争力の要素であるマクロ経済の安定性、ビジネス環境、インフラの質に加えて、現在ではデジタル対応力やグリーン・トランジション(脱炭素への移行)のマネジメント、さらには高いレジリエンスを備えた戦略が求められています。
今年追加された6つの新指標:
- 自由選挙政府(民主主義の成熟度)
- パスポートの自由度(国際的な移動のしやすさ)
- メディアの偏向度
- AI関連特許出願数
- 食品廃棄量
- 環境パフォーマンス指数
日本の4つの主要素の順位は、以下の通りです。
- 経済パフォーマンス:23位(2024年は21位)
- 政府の効率性:38位(同42位)
- ビジネスの効率性:51位(同51位)
- インフラ:19位(同23位)
IMD世界競争力センターのディレクター、アルトゥーロ・ブリス教授は、日本に関して、以下の見方を共有しました。
「私たちは数年前から、日本が過去の低迷から徐々に回復しつつあることを指摘してきました。そして実際に、今年の結果にその傾向が見て取れます。日本のランキングは着実に改善しています。ここで重要な点が2つあります。
1つ目は、輸出依存型の経済構造により、日本が今後、関税政策の変動や保護主義台頭の影響を大きく受ける可能性があることです。また、観光、金融、IT、コンテンツ を含むサービス輸出の分野では、為替のボラティリティ(変動性)が大きなリスク要因となっています。
2つ目は、ビジネス効率性のランキングが依然として低く、日本経済全体の強さとの間にギャップが見られることです。その背景には、企業が変化に柔軟かつ迅速に対応する柔軟性や俊敏性を十分に備えていないという構造的な課題があります。こうした点で、日本は台湾やシンガポールのように、イノベーションを実現している国々に後れを取っているのが現状です。」
IMD北東アジア代表、高津尚志は、こう分析しています。
「日本の順位は4年ぶりに回復、35位となりました。政府効率性の改善やインフラ面での強み維持・向上が奏功しました。不確実性が高まる世界で、日本が一定の安定感を維持していることは強みです。
一方、日本は依然、「外部依存」と「内部硬直」という二重の課題に直面しています。経済は国際通商環境や為替変動に左右されやすく、企業現場ではアジリティ、イノベーション創出、国際人材の活用、デジタル活用の深化などビジネス効率性の面で改善の余地が大きく残ります。
日本の強みを再発見・活用しつつ、企業の柔軟性・アジリティを高める本格的な投資と改革が必要です。今回の順位改善は、日本が変化への準備を進めつつあることを示しましたが、さらなる経営の変革力が不可欠です」。
詳細はこちらから: https://www.imd.org/centers/wcc/world-competitiveness-center/rankings/world-competitiveness-ranking/