「モノの見方を変えに行く」
組織開発のプロが
OWPに通い続ける理由

IMDのグローバルリーダー育成プログラムOWP (Orchestrating Winning Performance) 。これまでに4回参加 してきた人がいます。組織人事コンサルタントの山本紳也さん。国内外のビジネス系カンファレンスの中から、なぜOWPに参加し続けているのでしょうか。2023年6月にスイス・ローザンヌで開かれたOWPのセッション(講義)の風景など、忌憚なく語っていただきました。

 

山本紳也(やまもと・しんや):組織人事コンサルタント。HRファーブラ代表取締役。PwCパートナー等を経て、独立。国内外の企業の人事戦略などに30年以上携わる

山本:OWPに通い続ける理由ですか? 最先端のテーマをフォローして、自分の仕事に役立てたいというのもありますが、何より楽しく学べるからです。年1回は行かないと落ち着かない。コロナの間、参加がかなわず逆に不安だったくらいです。

5日間の日程に、リーダーシップ、地政学、AI、ウェルビーング、気候変動まで、様々なテーマの講義がギュッと詰まっていて、その中から仕事に役立ちそうなもの、新しい考え方が得られそうなものを選んで参加しています。これとは別に、早朝にヨガやマインドフルネスのセッションがあるし、夕方には基調講演も開かれます。

202311月20日開幕のOWP Singaporeの時間割。早朝は芸術分野、Morning Session/Afternoon Sessionでは、DX、リーダーシップ、人材、組織変革、持続可能性などのテーマで数十もの講座が開催されます。

 

山本:ビジネススクールのお勉強の場というより、50もの国の参加者が、考えをぶつけ合うライブ感たっぷりな議論の場という方が、しっくりくる言い方です。

教授の担当領域だって、縦割りじゃないんですよ。例えばMichael Wade教授は、IT、マネージメント、リーダーシップという領域にまたがって、いろんな分野をしゃべってくれる。

山本さんがOWP Lausanne 2023で参加したセッションのテーマ(一部)

山本:教授によって見方もいろいろです。生成AIだって、悲観的な見方をする教授もいれば、パートナーみたいに付き合えばいいよ、という教授もいる。いろいろあるのが、楽しいんですよ。

セッションでの教授の役割は、受講者に考えるきっかけを与え、思考をけしかけること。もちろん、最初はある程度の知識は提供してくれますよ、ディスカッションの入り口を作るために。

ただ受講者は一線で働くエグゼクティブばかりですから、教授の解説に「うちの会社はそうじゃない」「僕は違うと思う」と、どんどん指摘します。教授も教授で、思いっきり「ビジネス目線」で応酬する。「理論的にはこうであるべきだ」なんていう発言は、まず聞いたことがありません。

正しいか間違っているかを答え合わせする、なんてこともしません。正解は教えたり、与えたりするのではなく、自分で探したり、一緒に探したりするもの、というスタンスはIMDの教授たちに共通していると思います。

山本:こうしたスタイルの講義は、Teachingではなくて、Learningですよね。ハウツーを教えてくれるわけではありませんから、真面目に聞いてさえいれば何かが身に着くわけではありません。

答えを求めたところで、逆に教授から「君はどう思うんだ?」と問いかけられるでしょうね。答えはあなたが持っているでしょう?と。与えられる「正解」を求めにきた人、受け身の学びで来た人は、戸惑ってしまうんじゃないかなあ。

山本:人材育成や組織開発のコンサルティングで、日本のいろいろな企業を見てきましたが、「思考」や「探索」をしてこなかった人が、驚くほど多いな、と思うことがしばしばです。

例えば、管理職向けの研修で「自分の考えを好きに書いてください」と言うと、受講している管理職が「何を書けばいいんですか。もう少し詳しく説明してください」と質問してきます。「何を書くのが正解なのか」「この欄にはこういうことを書きなさい」と教わってきたから、「自分の想いや考えを書く」ことに慣れていないんです。

明確な「正解」をもらえないような研修だと、「学んだ気にならなかった」「持ち帰る『お土産』がない」という。本来は自分で答えを探すことが、楽しいのに。残念だけど、そこがなかなか分かってもらえません。きっかけと場さえあれば、楽しめるはずだと思うんですが。

僕がこの数年、OWPに参加を続けてきたのは、たぶん、そういう思考の探索をけしかけてくれるような場が、日本ではなかなか見つからないからだと思います。

常識にとらわれない世界に行って、モノの見方を変えたいんです。僕の場合は、それを外に求めるしかない。そう、モノの見方を変えたくて、OWPに通い続けているのでしょうね。

OWP Lausanne 2024 受付開始

2024年6月24~28日の5日間。詳しくは写真をクリック。

 On campus program Orchestrating Winning Performance Meeting Uncertainty with Resilience