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経営幹部プログラムで探求したDoingとBeing

経営幹部プログラム PED 三井物産 受講者インタビュー

IMDの経営幹部教育コースの一つ「Program for Executive Development」(PED)。松山浩之さんは、20235月、同プログラムのすべてのコースを修了しました。「10km走を走り切った後、フルマラソンのスタートラインに立っている感じです」。そう振り返る松山さんに、PEDの学びを語っていただきました。

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PEDの受講者と松山浩之 さん右から3人目本人提供

松山浩之さん:三井物産株式会社フィナンシャルマネジメント第3部内部統制推進室長。1996年入社、経理、税務、財務、リスクマネジメント、内部統制などを担当。米国に4年、豪州に5年駐在。社内制度を利用してIMDへ。2022年11月(FBL)、2023年3月(TBL)、2023年5月(TBL)に分けてProgram for Executive Development(PED)を受講、PED Diplomaを取得。


Program for Executive Development(PED)

組織の上級管理職、経営幹部向けの対面・オンラインプログラム。「Foundations for Business Leadership」(FBL)「Transition to Business Leadership」(TBL)の2つを組み合わせている。

FBL(20日間):部門横断的なビジネススキル、起業家マインド、意思決定スキル、複雑な状況での意思決定やリーダーシップを身に付ける。
TBL(14日間×2回):自身の内面と向き合うリーダーシップ開発と、組織変革の実行スキルを高める。
2022年の受講者は19の国籍、15年以上の経験があった。職階は中・上級管理職が74%、Cレベル(経営層)が26%だった。


自分が試されるシミュレーション演習

前半のFBLで松山さんが参加した授業の一つが「ビジネスシミュレーション」。受講者5、6人のチームが、2日間をフルに使い、実際に直面するような、複雑かつ厳しい状況で、チームで成果を生み出す演習型の授業でした。

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PEDの授業の様子=IMDの動画から記事の内容とは関係ありません

 

松山:架空の製品の製造販売事業会社の経営陣という設定で、材料調達から製造管理、マーケティング、財務戦略といった施策を、フェーズごとに具体的な予算配分や売上目標まで立てながら、チームで決めていきます。

フェーズごとに他チームとの競争結果をコンピューターで計算され、評価を受けるのですが、資金不足でイエローカードを出されたり、軌道修正したり、立て直したり。最終的にはKPIの到達度で評価されますが、私達のチームは優勝することができ、みなで喜びを分かち合いました。

事業の判断は、企業なら責任者が担いますよね。でも「シミュレーション」では、たまたま集まった多様なバックグラウンドから成るメンバーで時間的プレッシャーもある中で、合意形成していく必要があり、とても大変でした。

喧々諤々の議論が膠着して、疲れ果てて空気が刺々しくなったこともありました。思うような結果にならず「あの時の判断が間違っていた」と批判するメンバーや、議論に耐えられず、途中で参加度合が希薄となるメンバーもいました。プレッシャーの下で1人1人の資質があらわになるような時間でした。

緊張と重圧に晒され続けたシミュレーションの締めくくり、たどった道のりをメンバーで振り返りました。そこで、松山さんはハッとさせられたといいます。

松山:私は、ある程度議論して、自分の意見が通らないと、自分を閉じてしまう傾向があるんです。そこが自分の弱点だと常々感じていたんですが、シミュレーションを一緒にやったメンバーの人に、そこをズバッと言い当てられてしまいました。シミュレーションの中で「もう、この人興味ないな」と受け取られたところがあったんでしょうね。プレッシャーを受ける中でそのような習性が出たのか、とドキッとしました。

今から振り返ると、プレッシャーを受ける中で、チームとして合意形成をしなくてはならない時に、自分のどのような行動が現れるのか試されていたのではと思います。

マネージャーからリーダーに。社内制度でIMD

松山さんは、海外のビジネススクールのプログラムを受講できるエグゼクティブ層向けの社内制度を使って、PEDに参加しました。

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PEDでチームを組んだメンバーと松山さん提供

松山: きっかけをたどるとオーストラリアの駐在経験です。出向先の企業が現地企業を買収し、両社の組織統合を担当しました。異なる文化の組織、多様な背景を持つ人たちをまとめる仕事は、難しくもやりがいがありました。

米国の駐在経験も含め、9年間多様な人たちが働く職場をマネジメントしてきた経験が自分にはある。これをもっと発展させて、さらに全体を見るリーダーとして組織を変革していく能力を身に付けられたらと、社内制度に応募しました。米国のビジネススクールは以前経験しているので別の場所を、とIMDを選びました。

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FBLの講義=IMD動画から記事の内容とは関係ありません

自己を掘り下げる「インナーリーダー」

FBLを終えた松山さんは、数か月後にTBLに参加しました。MBAのような知識取得が中心のFBLとは違い、TBLは自分の内面に向き合うソフトスキルが中心でした。その中で松山さんが「新鮮だった」と振り返るのが、「インナーリーダー」という授業でした。

松山:モチベーション(動機)、パーパス(目的)、バリュー(価値観)、エモーション(感情)といった、内面を掘り下げる授業でした。プライベートでの生活まで広げ、かつ子供の頃までさかのぼり、文章や受講者との対話を通じて、自分が本当に大切にしているものや自分の気持ちを探求し、言葉にしていきました。理論や実践を学ぶビジネススクールで、こういうこともやるのか、と新鮮でした。

この授業で教わったのが「Doing」(自分の行動)と「Being」(自分の状態)です。仕事で求められるのは「Doing」ですが、「それだけではリーダーとして持続可能とはいえない」と言われました。湧き上がる動機や支える価値観も必要なのだ、と。リーダーのDoingとBeingが、組織においても「Doing」(組織としてのFocus)と「Being」(組織へのEngagement)に繋がります。こういったかたちで自分を探求していく機会はそれまであまりなかったのもあって、仕事だけでなく、これからどう生きるかを考えるきっかけにもなりました。

「急がず一つずつ」を積み重ねていく

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PED修了後、松山さんは会社にIMDでの学びをこう報告しました。

「ハードスキルとソフトスキルを網羅的にバランス良く学ぶことができました。参加者とのネットワーキングの機会も多く設けられていました。3回の渡航では、毎回体力気力を使い切りましたが、疲労感と同時に充実感を感じることもできました。とても良い経験ができたと満足しています」

 

松山:受講の間は、10km走を全力で走っている感じでした。普段の仕事に戻った今は、フルマラソンのスタート地点に、もう一度立っているような気持ちです。あれだけ一生懸命走ったのに(笑)。不思議な気持ちです。

学びを実生活で生かすのは、簡単ではなく、こうすればうまくいくという正解もありません。急がず一つずつやっていく。そうしたら少しずつ変わっていく。その積み重ねが大事なんだ、と講義でも教わりました。

変化をあげるとすれば、仕事への姿勢でしょうか。自分らしい仕事を意識しようと思うようになりました。言い換えれば、自分にあったやり方、自分がやりたい方法を意識的に仕事に採り入れていく、という感じです。考えていること、感じていることを皆と共有し、対話しながら仕事に反映させていく。結果的にそれが自分が納得できる働き方につながるのだろう、そう考えるようになりました。

この経験が仕事にどう生きてくるのか、これから見えてくると思っています。

PED動画(詳細はサイトへ→)