
日本の大手エレクトロニクス企業であるTDKは、IMDの5日間プログラム「Orchestrating Winning Performance(OWP)」を、単なるリーダーシップ向上の研修として位置付けるのではなく、自社のグローバル・アドバンスト・マネジメント・プログラム(Global AMP)の中核に据えています。世界とつながり、未来志向で考え行動できる次世代のリーダーを継続的に育成し生み出す重要な戦略の一環となっています。
「私たちはOWPをグローバル・アドバンスト・マネジメント・プログラムの主要なモジュールとして組み込んでいます」と、TDKのグローバルリーダーシッププログラムを統括するカリーヌ・ル・エジェは語ります。「OWPは、最初の対面モジュールでまさに “触媒” のような存在です。参加者の成長を加速させ、視野を飛躍的に広げます」。
戦略を実行に移すための研修設計
TDKのGlobal AMPはグローバルに責任を担うゼネラルマネージャーやデピュティゼネラルマネージャー(副責任者)を対象に、能力を磨き、将来の課題に備える実践的なプログラムです。
2019年以降、TDKは毎年グローバルで活躍している幹部社員をOWPに派遣しており、2025年は26名が参加しました。参加者は、TDK の中期経営計画の達成に貢献する「インパクト プロジェクト」にて取り組んでいる事業上の課題と、参加者自身の成長ニーズの両方にマッチした最適なOWPのストリーム(専門テーマ)を選びます。
プログラム終了後には、リーダーシップ・組織変革が専門で、TDKのGlobal AMPプログラムのディレクターでもある ウィンター・ニー教授による、振り返りセッションを実施。ここで学びを整理し、具体的な事業課題に結びつけていきます。
ル・エジェはこう語ります。
「参加者は個人として学ぶだけでなく、一日の終わりに他の参加者と常に学びを共有し、それがTDKにとってどのような価値をもたらすのかを振り返ります。こうしたやり取りから集合知が生まれ、アイデアを具体化したり具現化するといった実践レベルの活動が加速するのです。」
理論だけでなく、行動を変える学び
OWPは、単なるアイデアの習得にとどまりません。参加者の思考やリーダーシップのあり方そのものを変えるきっかけとなります。
アルミニウム・フィルムコンデンサBG(Business Group)のCOO、フィオナ・オウにとって、OWPは 視野を大きく広げると同時に、考えを深めるきっかけとなった体験でした。特に印象に残ったのは、「対立を建設的に扱うこと。複雑な課題には体系的な解決策が必要であり、唯一の正解はない」という気づきです。
同BGのグローバルプロダクトマーケティングの責任者、シャオ・チャンは、OWPが変革期の混乱に立ち向かう助けになったと語ります。
「このプログラムを通じ、変化に適応し、組織の中で効果的にマネジメントする方法を学びました。最大の収穫のひとつは“俊敏性(アジリティ)”の重要性です。迅速に動くことで、不確実性に対応できるという学びです。」
TDKラムダのEMEA地域のマネージングダイレクターであるマット・コットンは、OWPからすぐに活用できる実践的なツールを得ました。
「顧客は私たちほどTDKの製品に愛着を持っているわけではなく、あくまで課題解決の手段として見ている、この気づきは衝撃的でした。価格ではなく、ソリューションの本当の価値を見極めることに焦点を当てるべきだと考え方を変えることができました。」
圧電・保護デバイスBGのEVP兼COO、フレデリコ・ノールも、鮮明な洞察を得たひとりです。
「ハワード・ユー教授(戦略・イノベーション専門)の『Get Ready to Leap』の授業で、漸進的な変化だけでは十分でなく、必要なのは “破壊的(ディスラプティブ)な変革”であることに気づかされました。」
ノールはその学びをもとにチームを再編しました。「製品開発と生産の連携不足という本質的な課題がありましたが、OWPで得た知見を生かして組織を再編し、そのギャップを埋める責任者を配置しました。この変化が、BGの新しいアプローチの基礎となりました。」
CEOも共に学ぶ、リアルタイムの対話
TDKの社長執行役員CEO、齋藤昇はプログラムを支援するだけでなく、毎年自ら参加しています。
「彼は毎年すべてのプロジェクトチームと時間を共有します」とル・エジェは語ります。「これは社長としての強いメッセージです。つまり、彼は参加者のアイデアを理解し、自らのビジョンを直接伝えたいという思いの表れなのです。」
TDKのCHRO、アンドレアス・ケラーもこう強調します。
「OWPでの交流は、参加するチームメンバーにエネルギーと自信を与えます。彼らは新たな視点と、すぐに実行できる戦略を持ち帰ることができます。」
また、ある参加者はIMDのフレデリック・ダルザス教授(マーケティング・戦略専門)によるサステナビリティのセッションに感銘を受け、社内イベントでの講演を依頼しました。
世界とともに進化する学び
OWPのコンテンツは固定されたものではなく、毎年常に新しいテーマや最新の知見が加わります。
TDKの生産本部副本部長、フィリップ・アーヴィングは2024年にOWPに参加しました。特に印象に残ったのは、カタリーナ・ランゲ教授(リーダーシップ専門)と、ホセ・パラ・モヤノ教授(デジタル戦略専門)による「AIとコーチング」のセッションでした。
「AIがマネージャーのコーチング能力を高め、従業員のサポートができるとは思いもしませんでした。」
アーヴィング氏はOWPを「ミニMBA」と表現します。
「濃密かつ精緻に設計され、常に最新の知見を取り入れています。自身の知識に自信を持ち、ビジネスの方向性を定め、確信を持って実行に移す力を与えてくれました。」
一過性ではない、長期的なインパクト
CHROのケラーはこう語ります。
「OWPはチェックリストを埋めるための演習ではありません。参加者に自信、新たな視点、そして変革と成長を促すより実践的な戦略を与えてくれます。」
ル・エジェも続けます。
「必要なものをすべて手に入れ、学び、視野を広げ、リーダーやマネージャーとして成長できる、欲しいものがすべてかなうようなキャンディショップのような場所です。そして同時に“鏡”でもあります。自分の現在の立ち位置と進むべき方向を映し出してくれるのです。」
TDKは、単に人材をOWPに送り出すのではなく、その学びを組織全体に還元し、未来を見据えたリーダーシップ文化を着実に築き上げています。
IMDの「Orchestrating Winning Performance(OWP)」とは
世界規模で経済や市場が分断され、技術革新や政治的緊張が続くなか、強力なリーダーシップの重要性はかつてないほど高まっています。OWPは、そうした時代に必要なリーダー像を形にするためのIMDのフラグシッププログラムです。
プログラム詳細はこちら
https://www.imd.org/owp/