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文化、組織、社会。CxOが語る、それぞれの「変革」

「日本経営変革フォーラム」発足記念イベント報告

5月11日に開催された「日本経営変革フォーラム」の発足記念イベントでは、日本を代表する企業の経営幹部が登壇し、自らの変革の道のりや課題を率直に語り、参加者と対話しました。その一部をご紹介します。

櫻田謙悟・SOMPOグループCEO取締役代表執行役会長は、近著「失った30年を越えて、挑戦の時-生活者(SEIKATSUSHA)共創社会」をもとに基調講演をしました。

日本のGDPの伸び率の鈍化は、意思決定と行動の遅さによるもの、と指摘。戦後、GDP世界第2位の経済大国に成長した日本が2010年、中国にその座を明け渡すまでを、こう振り返りました。

「日本は変わらなかったのではなく、変わりたくなかった。責任は私たち経営者にある。中国に抜かれるずっと前から、経営者は変わらなければならないと分かっていた。でも安全でクリーンな経済大国で、痛みをとってまでラディカルな変化を受け入れようという、説得力のある議論は起きなかったのです」

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日本の今後の使命は、経済競争力の再生のみならず、世界一幸福度の高い国を追い求めること、としたうえで、櫻田CEOは、キーワードに「生活者」を挙げました。生活者を「家族の一員であり、地域社会の住民であり、有権者でもある人」と定義し、「日本を構成する非常に重要なステークホルダー」と位置付けました。「このステークホルダーが議論する中で出てくる答えこそが、私達が目指す姿です。その姿に向かって行動することが必要です」

また、行動するにあたり、3つの要素が必要だと提言しました。

一つ目の「成長」には「イノベーション」と「ダイバーシティ」が不可欠であり、日本は特に「ジェンダー」「年齢」「パーソナリティ」「LGBTQ」の分野が遅れていると指摘しました。

二つ目の「分配」には、成功をたたえ、失敗後に再チャレンジできる土壌が必要だとして、足を引っ張る文化から、失敗を恐れない文化と仕組みへの移行を呼びかけました。

最後の「価値」については、「時価総額だけが企業価値ではない。株主だけに提供する価値であるべきではない」と持論を展開、試みの一つとして、自社の介護サービス事業を紹介。ヘルパー不足という「社会的課題へのチャレンジで生まれる価値を市場に説明し、理解を得て、企業価値を上げたい」と語りました。

「社員との対話はすべてアドリブ」
CEOが本気を伝えるNECのミーティング

一條和生IMD教授をファシリテーターに、3社のCxOが自社の変革の歩みを語りました。

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森田隆之NEC代表取締役執行役員社長兼CEOは、組織文化改革の取り組みを語りました。その一つが2021年の社長就任から毎月続けている、社員の対話の場「タウンホールミーティング。国内は1万人、海外は数千人が毎回参加し、2022年は国内12回、国外14回開いたといいます。

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「森田がどういう人間なのかをオープンに発信していく。社員との対話はすべてアドリブで、答えにくい質問にも答え、我々が本気なのだ、と伝えていく」

外部調査会社による、社員のエンゲージメントスコアも測定、中期経営計画では「2025年度までに50%達成」という目標を盛り込み、25%(20年度)、35%(21年度)、36%(22年度)と伸ばし続けています。

また、仕事を通じ、社員がリーダーシップを自ら発揮することで変革の経験できるよう、働く環境の支援と業務プロセスの標準化の徹底を並行して進めていると話しました。

「いろんな情報にさらされる」
本社移転で変わったパナソニックコネクトの空気

かつて新卒で入った旧松下電器産業から、外資系企業などを渡り歩き、2022年、25年ぶりに社長として戻ったパナソニックコネクトの樋口泰行CEO。「会社の嫌だった部分を一つ一つ潰している。優秀な人材がいるのに指示待ちになっている。生産性も上がらないし、正しい戦略に必要な情報も上がってこない」という問題意識から、戦略と文化の変革に取り組んでいます。

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まず実行したのは、顧客の8割が集まる東京への本社移転でした。「社員が固まらず、バラバラになっていろんな情報にさらされ続けるうち、徐々に変わり、成長した」と振り返ります。

また、勢品のコモディティ化から脱するために、ソリューションやソフトウェア、複雑系のハードウェアを取り入れ、収益性のある事業モデルへの転換にも取り組んでいます。

「『言われたことをやっていればいいんだ』という“自分の城”を作る組織長を別の人に替えるだけで、嘘のようにコミュニケーションがよくなった。そうした人事が、組織はこういうリーダーを求めているのだ、という社員へのメッセージになる」と、語りました。

「社員の体験向上」で高めるエンゲージメント
みずほFGの文化変革

みずほフィナンシャルグループの秋田夏実CCuO(チーフ・カルチャー・オフィサー)は、マーケティング領域で培った考え方を、現在担当する人事領域で活かしていると語りました。

「従来の人事は管理という側面が強かったが、働くことへの考え方が変わり、若年労働者も減っている。そんな中、社員のエンゲージメントをどう高めていくかは、社員のエクスペリエンス(体験)にかかっている」

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マーケティング領域での「カスタマージャーニー」(顧客体験)の考え方が、**人事領域でも「社員の体験向上」**という側面で重要になってくると指摘しました。

昨年、150人の社員有志と作ったワーキンググループで、数カ月間、経営陣と討論を続けたといいます。「経営だけで意思決定せず、現場から汲み上げるには自由に意見を言える環境が必要」。その旗振り役として、昨年12月からCCuOに就任、文化の改革を担っています。

「地政学上、日本復活への期待感が高まっている」

IMD関係者も日本の現状について語りました。

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イベント冒頭、あいさつに立った一條和生IMD教授は「日本企業の変革をさらに促進したい思いでスタートしました。現状に甘んじず、果敢に挑戦し、克服のためのアイディアをこの場で皆さんと見つけたい」と意気込みを語りました。

また、日本の競争力の低下を指摘する一方で「昨年頃から、地政学上の問題を背景に、日本復活への期待感が高まっている。日本が変革を経て再び立ち上がり、世界の経済・平和の発展に貢献することが日本のミッションではないかという声が非常に高まってきている」などと話しました。

「ビジネス効率性の下落が顕著」
世界競争力ランキング、日本の現在地

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高津尚志北東アジア代表は「世界競争力ランキング」の最新データから見える日本の課題を解説。「残念ながら日本は、この25年間で長期低落傾向にある。総合順位は97年の17位から34位に下がった」と述べました。

対象国63カ国中「雇用」「科学インフラ」「健康と環境」では上位10位に入りましたが、「物価」(60位)、「公的財務の健全性」(62位)など、最下位に近いものも。「ビジネス効率性の下落が顕著。2014年(19位)からの8年間で、50位台に真っ逆さまに落ちている」(高津代表)。

各国の経営幹部による回答も厳しい結果でした。「日本企業は俊敏か」という問いへの点数評価は、2014年の4.93点から3.63点に低下。「起業家精神は十分に存在しているか」への回答も同じ傾向で、「デジタルトランスメーション化」にいたっては世界最下位でした。

「これを健全な危機感の発露と見るのか、自信喪失、あるいは諦めの表れと見るのか。いずれにしても、ネガティブなマインドセットはネガティブな結果につながりやすい」と、高津代表は結びました。

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