「世界競争力ランキング」から見る日本の課題と可能性

経産省幹部と高津北東アジア代表が対談

IMDが発表した2023年の「世界競争ランキング」で、日本は64カ国中35位と過去最低となりました。同様に、「世界デジタル競争力ランキング」「世界人材ランキング」もそれぞれ32位、43位と過去最低でした。 

これを受け、高津尚志IMD北東アジア代表が2月に行われたRIETI(独立行政法人・経済研究所、経済産業省のシンクタンク)主催の公開ウェビナーに登壇。これらランキングの測定法や基準、順位から見える日本の課題・可能性などについて講演し、経済産業省幹部との公開対談を行いました。 

まず高津代表は講演の趣旨について、「順位に一喜一憂せず、現状から何を読み取り、どう活かしていくべきか」「競争力を向上させる建設的・創造的議論を始めるきっかけにすべし」と言明。

「政・経・民・学の各界が垣根を取り払って議論し、多様な知見を活かしていくことが肝要。単純な正解はありません」 

「このランキングはIMDによる“人間ドック”のようなもの。毎年結果を知ることで、己の生活習慣を変え、健康状態・パフォーマンスを上げていく。そうした国の指標であることをご理解ください」 

ーーなどと話しました。 

ランキングは64の国・地域を同じ指標で比較したもので、

1)世界競争力ランキング:企業が持続的価値創造を行う環境をどれだけ育めているか 

2)世界デジタル競争力ランキング:デジタル技術の活用・展開が、行政の慣行やビジネスモデル、社会の変革にどれだけ活かされているか
3)世界人材ランキング:企業に必要な人材をどれだけ育成し、惹きつけ、維持できているか

ーーの3つが主要ランキングとして知られています。

日本の順位を見ると、1)は過去四半世紀、低落の一途。特に「ビジネスの効率性」の低迷が著しく、その多くが「人材・組織」に起因。また「政府の効率性」の低迷も目立つ。2)では技術・科学基盤の強さが見え、人材・組織を強化すればそれを活かせる。3)は大きな改革の余地があり、政策・施策の構築と運用の加速が必要、といった課題が明らかになると指摘。 

さらに1)を構成する4つの因子、20のサブ因子を詳しく見ると、日本の強みとして「雇用」「科学的インフラ」「健康と環境」が、逆に弱みとして「物価」「公的財務」「ビジネスにおける生産性・効率性」「経営慣行」などが浮かび上がると解説しました。 

では、これらの課題をどう克服すべきか。高津代表は「ペシミズムを打破し、価値観と施策を一致させること」と訴えました。 

喫緊の課題は、「生産性の向上」です。これは「政・官との共創的議論で改善できる要素がある」。日本の経営幹部は、政府や中央銀行の政策に対する不満が非常に強いことも調査で判明。それに呼応して、事業創出や海外人材・資本活用でも他国より劣っていることがわかりました。 

では、彼らの不満は現状を正しく認識した上のものなのか。あるいは、認識自体が間違っているのか。そこで高津代表は「企業幹部と政・官の間に相互理解や信頼が欠如している。事実を把握するため、本音の議論と行動が今こそ必要」と説きました。 

さらに日本経済の維持・成長には「国内人材の育成、国外の高度人材の誘致、人材の多様化が不可欠」。これを担う管理職の能力や国際経験、語学力を伸ばしていくスキルとマインドセットへの投資を求めました。 

IMDは今後も政・官・民・学のリーダーの方々と対話を重ね、日本の競争力向上に貢献していきたい」 

経産省幹部「悲観するのではなく、楽観に基づいた危機感が重要」

後半では、梶直弘・経済産業省経済産業局産業構造課長と議論を展開。梶氏は日本の順位の低下について、「悲観するのではなく、楽観に基づいた危機感にすることが重要」と発言。またスイスやフィンランドなど、戦略的に競争力を高めた欧州の小国から学ぶべき点を高津氏とともに挙げ、治安や文化といった面で世界から評価される日本の良さを活かしつつ、「官民が一緒になって有為な人材の誘致などを推進していきたい」と締め括りました。 

※ 動画はこちらからもご覧いただけます。

IMD競争力ランキングに見る、日本の課題と可能性Part1

IMD競争力ランキングに見る、日本の課題と可能性 : Part2